2011年8月25日木曜日

網膜疾患

網膜出血
² 種類
{ 網膜前出血
網膜内境界膜と視神経線維層のあいだに網膜血管から出血したもの。増殖性糖尿病網膜症で好発する。眼底所見にてニボーを形成するのが特徴である。
{ 網膜浅層出血
神経線維層に出血したもので、神経線維によって出血部位が放射状に見える(火焔状出血)。網膜中心静脈血栓や白血病性網膜症で生じる。
{ 網膜深層出血
網膜血管よりも深部に見える。出血は暗赤色の小斑状(点状出血) で、主として外顆粒層にたまる。糖尿病性網膜症で好発する。
{ 網膜下出血subretinal hemorrhage
{ 網膜色素上皮下出血hemorrhage under the pigment epithelium
{ white central hemorrhage(Roth's spots)

網膜中心動脈閉塞症,網膜中心動脈塞栓症centralretinal artery occlusion,CRAO
² 概念
網膜中心動脈の閉塞である。網膜中心動脈は視神経の中心を通り、視神経乳頭上で枝分かれしたのち、神経線維層で毛細血管網を形成しながらさらに分岐する。本動脈は終末動脈であるから血行途絶は直ちに壊死につながることになり、救急治療の対象となる。

² 原因
{ 動脈硬化症
{ 糖尿病
{ 大動脈炎症候群
{ 高眼圧
緑内障や外力に起因する。
{ 塞栓症
¤ 感染性心内膜炎

² 症状
突然として急激な視力消失を呈する。前兆として一過性の視力低下や光視症が先行することもある。
{ 直接対光反射消失

² 検査所見
{ 眼底検査
閉塞部位よりも抹消の網膜動脈が著しく細いか、途絶している。網膜は虚血に陥るため網膜出血はない。
¤ 桜実赤斑cherry red spot
網膜動脈の虚血によって網膜内層の軸索が膨化し眼底が広範囲に乳白色に混濁するが、網膜内層を欠く中心窩は脈絡膜より栄養されるので小紅斑として残る。

² 治療
発症後数時間で不可逆性の変化に発展するので、救急治療の対象となる。
{ 血管拡張剤
亜硝酸アミルの吸入で網膜血管を拡張する。
{ 前房穿刺
眼圧を下げる。
{ 眼球マッサージ
網膜血管の循環を改善する目的で行なう。

 網膜静脈閉塞症
² 分類
{ 網膜中心静脈閉塞症CRVO
{ 網膜静脈分枝閉塞症BRVO
網膜中心静脈閉塞症CRVO の数倍発症しやすい。

 網膜中心静脈血栓, 網膜中心静脈閉塞症central retinalvein occlusion,CRVO
² 概念
生理的な狭窄抵抗のある網膜静脈の視神経篩板部通過部位に好発する。高血圧や糖尿病を持つ高齢者に多く、左眼よりも右眼に好発する。

² 病態生理
動脈硬化によって静脈が圧排され、網膜中心静脈が主幹部で閉塞することにより、視神経乳頭を中心に放射状の網膜出血を来たす。
{ 網膜浅層出血linear hemorrhage, super¯cial retinal hemorrhage
網膜表層の神経線維層に出血したもので、神経線維の走行に沿って出血するため、放射状に見える。
{ 新生血管の出現
広範囲な網膜虚血に反応して血管新生促成因子が産生され、血管新生が亢進する。発症から半年ほど経って出現するが、血管壁が脆弱なために容易に出血し、続発性緑内障へと発展する。

² 症状
突然、無痛性に視力低下を来たす。

² 検査所見
{ 眼底所見
¤ 火焔状出血°ame-shaped hemorrhage
¤ 綿花様白斑cotton-wool spots

² 合併症
{ 新生血管緑内障neovascular glaucoma
糖尿病性網膜症や虚血性網膜中心静脈閉塞に続発し、虹彩の血管新生(虹彩ルベオーシス) によって前房角が閉塞されて眼圧が上昇するもので、予後不良となりやすい。広範囲な網膜虚血に反応して血管新生促成因子が産生され、これによって血管新生が亢進する。
{ 慢性黄斑浮腫

² 治療
{ レーザー光凝固法
蛍光眼底造影で無血管野を探し、ここをレーサーにて焼灼し、新生血管の増生を抑制する。また新生血管緑内障を予防する目的で虹彩ルベオーシスに対して行なう。

 網膜静脈分枝閉塞症branch retinal vein occlusion,BRVO
² 概念
網膜静脈の分岐が閉塞を来たし、網膜に出血を来たす疾患である。上耳側静脈域に好発する。

² 原因
高血圧が危険因子となる。網膜の動静脈が交差する部位は血管壁が共通であるために動脈硬化が静脈に波及しやすいからである。また交叉現象は上耳側に生じやすいため、本症は上耳側静脈域に好発する。

² 病態生理
網膜静脈分枝閉塞症では動静脈交叉にて静脈の閉塞と出血が生じるとともに、それより末梢では毛細血管が閉塞して無血管野となる。
{ 動静脈交叉現象arteriovenous crossing phenomenon
高血圧性網膜症において、動静脈はその交叉部において外膜を共有しているために動脈壁が肥厚すると静脈が圧迫されて閉塞する。これより抹消では血液の鬱滞と出血が生じる。交叉現象は上耳側に多い。
{ 無血管野領域
出血を来たした部位の網膜は毛細血管が閉塞し、のちに無血管野となる。無血管野からは新生血管が増生することになる。

² 症状
{ 視野障害

² 検査所見
{ 眼底所見
動静脈交叉から抹消にかけて、閉塞した静脈の支配領域に応じた網膜出血を認める。

² 合併症
{ 黄斑浮腫
{ 網膜新生血管

² 治療
{ 光凝固法
無血管野領域に対して行ない、新生血管の増生を抑制する。

網膜色素変性症pigmentary retinal dystro-phy,retinitis pigmentosa
² 概念
夜盲や視野障害などの症状を呈する遺伝性疾患の総称であり、遺伝形式は常染色体劣性遺伝が多い。10 歳頃より発症し、徐々に進行しながら最終的に50 歳頃には失明に至る。

² 病態生理
常染色体優性遺伝形式の本症ではロドプシン遺伝子の異常が報告されている。

² 症状
{ 暗順応障害nyctalopia
進行性の夜盲を呈する。
{ 視野狭窄
最初は輪状暗転で始まり、求心狭窄に至る。なお眼圧は正常であり、中心窩は末期まで侵されないので中心視力は長期間保たれる。

² 検査所見
{ 眼底所見
¤ 骨小体様色素沈着bone-spicule formation
眼底上周辺網膜に骨小体を特徴とする黒色の色素斑が出現する。
¤ 血管の狭細化
¤ 嚢胞様黄斑浮腫
{ 網膜電図ERG
初期からa 波およびb 波が消失する。

² 合併症
{ 白内障

網膜剥離retinal detachment
感覚網膜が網膜色素上皮層から剥離する病態をいう。

² 分類
{ 裂孔原性網膜剥離rhegmatogenous retinal detachment
裂孔rhegma から硝子体液が網膜下に入り込むと、色素上皮と視細胞外節との接着は弱いために、色素上皮と視細胞層との間が剥離する。網膜剥離のなかで頻度がもっとも多い。
¤ 後部硝子体剥離
¤ 眼球外傷
{ 牽引性剥離tractional detachment
多くは増殖性糖尿病性網膜症に起因し、網膜が硝子体眼房に牽引されることで生じる。
¤ 増殖性糖尿病性網膜症
¤ 未熟児網膜症
{ 漿液性剥離, 出血性剥離serous detachment,hemorrhagic detachment
色素上皮層や脈絡膜の疾病に続発し、感覚網膜の下に液が貯留することによって生じる。
¤ 中心性漿液性網脈絡膜症(増田型)
¤ 原田病
¤ 老人性黄斑変性

² 症状
{ 飛蚊症
{ 光視症
{ 視野欠損
{ 視力障害
{ 虹彩振盪iridodonesis
眼圧が下降するために眼球運動に伴なって虹彩がピラピラと振動する所見である。

² 検査所見
{ ERG
a 波およびb 波とも減弱もしくは消失する。
{ 眼圧低下

² 合併症
{ 線状網膜炎striate retinitis

² 治療
{ 裂孔原性網膜剥離に対する治療
裂孔を閉鎖し、網膜下液を排除して網膜を完全に復位する。さらに脈絡膜内に損傷部をつくって網膜をこれに瘢痕癒着させる。
{ 牽引性剥離に対する治療
硝子体切除、scleral buckling, ならびに眼球内へのシリコン油の注入。
{ 漿液性剥離, 出血性剥離に対する治療

 裂孔原性網膜剥離rhegmatogenous retinal detachment
² 概念
色素上皮とBruch 氏膜との接着は強固であるのに色素上皮と視細胞外節との接着は弱いため、裂孔から硝子体液が網膜下に入り込み、色素上皮と視細胞層との間が剥離する。網膜剥離のなかで頻度がもっとも多く、しばしば後部硝子体剥離posteriorvitreous detachment に随伴する。

² 分類
{ 急性裂孔原性網膜剥離
硝子体が裂孔を通じて網膜下腔に侵入し、sensory retina を色素上皮層から剥離する。
{ vitreoretinopathy に随伴した裂孔原性網膜剥離

² 原因
強度近視・無水晶体症・外傷などが契機となる。
{ 近視myopia
¤ 格子様変性lattice degeneration
¤ 後部硝子体剥離
{ 無水晶体症aphakia
{ 眼球外傷

² 症状
突発的に発症することが多い。
{ 光視症
網膜剥離の瞬間にキラキラと光ったものが見える。
{ 飛蚊感
{ 視力低下、視野狭窄

² 治療
裂孔を閉鎖し、網膜下液を排除して網膜を完全に復位する。さらに脈絡膜内に損傷部をつくって網膜をこれに瘢痕癒着させる。
{ 強膜短縮scleral buckling
弾力性のあるシリコン樹枝の棒などを強膜上に置き、この上に縫合糸をかけて強膜を網膜側に密着させる。
{ 硝子体置換術pneumatic retinopexy
ガスやオイルを眼内に注入する。

 牽引性網膜剥離tractional retinal detachment
² 概念
多くは増殖性糖尿病性網膜症に起因し、網膜が硝子体眼房に牽引されることで生じる。

² 原因
{ 糖尿病性網膜症
{ proliferative vitreoretinopathy
{ 未熟児網膜症
{ 眼球損傷

² 症状
症状は緩徐に進行するため飛蚊症やphotopsia が見られることは少なく、視野障害が徐々に進行する。

² 治療
硝子体切除、scleral buckling, ならびに眼球内へのシリコン油の注入を行なう。

未熟児網膜症retinopathy of prematurity,retrolental ¯broplasia, ROP
² 概念
網膜血管の増殖と出血によって網膜剥離をきたして失明するもので、未熟児の失明の原因として最多である。

² 原因
特に高酸素血症が誘因となる。

² 病態生理
出生後、網膜血管が順調に発育せずに異常な新生血管が発生し、出血と瘢痕によって牽引性網膜剥離に至る。

 網膜浮腫retinal edema
² 原因
{ 糖尿病性網膜症
{ ブドウ膜
{ 高血圧性網膜症

黄斑部疾患
² 種類
{ 中心性漿液性網脈絡膜症(増田型)
眼底所見にて、黄斑部を含む円形の限局した浸出液貯留による網膜剥離を呈する。
{ 中心性滲出性網脈絡膜炎(Rieger 型)
{ 梅毒性中心性網脈絡膜炎
{ トキソプラズマ性網脈絡膜炎

² 症状
{ 中心暗点

 中心性漿液性網脈絡膜症, 中心性網脈絡膜症増田型centralserous chorioretinopathy,CSR
² 概念
漿液性の網膜剥離であり、精神的なストレスの多い働き盛りの男性に好発する。

² 病態生理
黄斑部の網膜と脈絡膜のあいだにある色素上皮に裂け目ができ、脈絡膜からの漏出液が網膜下に貯留する。

² 症状
{ 中心暗点central scotoma
{ 色覚異常
{ 変視症metamorphopsia
漏出液によって網膜が隆起するため、対象が歪んで映る。
{ 遠視化
眼軸が短縮して遠視化する。

² 検査所見
{ 眼底検査
黄斑部を含む円形の限局した浸出液貯留と、それによる網膜剥離が認められる。
¤ 黄斑浮腫
{ 蛍光眼底撮影
病態を反映して、黄斑部において噴水状に漏出する色素が見られる。
¤ smoke-stack

² 治療
通常では半年以内に自然治癒する。視力低下が著しい場合や再発する難治例に対しては光凝固法を用いる。
{ 光凝固法
ただし本症は黄斑部近傍が病変なのでレーザーが黄斑部に照射されないように注意する。

 黄斑変性macular degeneration
² 概念
錐体細胞に障害を受けるので視力低下が必発となるが、網膜電図は正常である。

² 分類
{ 老人性
¤ 萎縮型
¤ 滲出型, 円盤状黄斑変性
{ 先天性

² 症状
{ 中心暗点
老人性黄斑変性, 年齢依存性黄斑変性, 加齢黄斑変性senile macular degeneration,age-

² 概念
60 歳以上の高齢者に見られる黄斑変性症をいう。欧米では高齢者の失明の原因として最多である。

² 分類
{ 萎縮型dry,nonexudative
網膜色素上皮層・Bruch 膜・脈絡膜毛細血管に萎縮と変性を生じる。
{ 滲出型, 円盤状黄斑変性wet, exudative, disciform
黄斑下の脈絡膜から生じた新生血管の増生によって黄斑下出血や黄斑浮腫などを続発して高度の視力障害に陥る。

² 原因
紫外線暴露が要因のひとつであると考えられている。

² 病態生理
Bruch 膜に亀裂が生じ、脈絡膜毛細血管層から色素上皮下にかけて新生血管が増生する。この新生血管が出血を繰りかえして結合組織の増生を生じる。特に黄斑部の網膜に好発するため視力低下は必至である。

² 症状
両側性に中心性の視力低下を生じる。
{ 中心暗点
{ 変視症
結合組織の増生によって黄斑部が隆起して変視をきたす。

² 検査所見
{ 眼底検査
滲出型では網膜下出血や硬性白斑など、新生血管を示唆する所見を得る。初期にはドルーゼンdruzen と呼ばれる黄色の沈着物が黄斑部に出現する。
{ 蛍光造影眼底検査
脈絡膜からの増生する新生血管が描出され、確定診断となる。

² 合併症
{ 漿液性網膜剥離

² 治療
{ レーザー光凝固法
黄斑下の新生血管が中心窩の外にある場合はこれを破壊する。病期の進行を抑止できるが、失われた視力は回復しない。
{ 硝子体手術
{ 網膜回転術
13.7.3 黄斑浮腫macular edema

² 原因
{ 眼内手術

 白血病性網膜症,白血病眼症leukemic retinopa-thy
² 概念
白血病、主に急性白血病に合併した眼病変をいう。

² 検査所見
{ 眼底所見
¤ 綿花様白斑cotton-wool spots
¤ 網膜出血

ぶどう膜炎 

10.2 ブドウ膜炎uveitis
² 概念
ブドウ膜とは虹彩・毛様体・脈絡膜の総称であり、角膜・強膜からなる眼球の外膜と神経上皮由来の網膜からなる内膜のあいだに中膜として存在し、血管とメラノサイトに富む。前部ブドウ膜炎は虹彩炎・iridocyslitis・cyslitis・pars planitis を含み、後部ブドウ膜炎はretinochoroiditis のことで、ブドウ膜炎とは前後部ブドウ膜に炎症が生じた状態である。ただし広義には網膜炎も含まれる。

² 分類
{ 前部ブドウ膜炎
¤ 虹彩炎
¤ 虹彩網様体炎
{ 中間部ブドウ膜炎intermediate
¤ pars planitis
{ 後部ブドウ膜炎
retinitis,choroiditis,retinal vasculitis, optic neuritis を含む。症状とし
て視野狭窄や視力低下を招きやすく、予後も悪い。
¤ 網膜炎
¤ 脈絡膜炎
¤ 原田病Vogt-Koyanagi-Harada disease
¤ 急性網膜壊死, 桐沢型ブドウ膜炎
{ 汎ブドウ膜炎
炎症の種類によって分類すると以下のようになる。
{ 肉芽腫性ブドウ膜炎
リンパ球や類上皮細胞が集まって肉芽腫を形成するもの。梅毒・結核・ウェゲナー肉芽腫症・交感性眼炎など。
{ 非肉芽腫性ブドウ膜炎
リンパ球や形質細胞の浸潤はみられるが、肉芽腫を形成しないもの。ベーチェット病・関節リウマチ・強直性脊椎炎など。

² 原因
日本ではベーチェット病・サルコイドーシス・原田病が原因として多い。
{ 外因性
外傷や外科手術に起因する。
{ 内因性
病原体が血行性に移行した場合や、自己免疫反応に起因する。
¤ ベーチェット病
¤ サルコイドーシス
¤ 原田病Vogt-Koyanagi-Harada disease
¤ 潰瘍性大腸炎
¤ 感染症
¢ 帯状疱疹
¢ トキソプラズマ症
¤ 免疫異常
¤ 悪性腫瘍

² 症状
視力および眼圧に異常を呈することが多い。

² 検査所見
{ 角膜所見
¤ 角膜後面沈着物keratic precipitate
前房中の炎症細胞が角膜内皮に沈着したもの。
¤ 角膜内皮細胞の障害による角膜浮腫
¤ 帯状角膜変性症band keratopathy
前部ブドウ膜炎の遷延化。
{ 毛様充血ciliary injection
虹彩、毛様体の炎症による毛様体部の充血であり、前部ブドウ膜炎で見られる。
{ 前房所見
炎症によって前房水中のタンパク濃度が上昇して混濁し、その中に炎症細胞が浮遊する像がみられる。
¤ 前房蓄膿
{ 隅角所見
隅角結節・隅角色素沈着など。
{ 虹彩所見
{ 硝子体所見
¤ 硝子体混濁
通常は微塵状混濁がみられるが、混濁が大きくなって弓状を形成すると雪玉状混濁snow ball like opacity となり、それが連なると首飾り状混濁string of pearls と呼ばれる。
{ 眼底所見
¤ 網膜浮腫
¤ 視神経乳頭所見
¤ 網膜血管炎
¤ 原田病では夕焼様眼底sunset fundus広汎な色素脱失により眼底が明るく見える。

² 合併症
{ 併発白内障

² 治療
{ 散瞳薬
虹彩網様体炎に対して、前眼部の安静と虹彩後癒着を防止するために
用いられる。
{ ステロイド剤
ただし副作用による白内障と緑内障の合併に注意する。
{ 抗菌剤
{ 免疫抑制剤
{ 毛様体筋麻痺薬cycloplegic
毛様体筋を麻痺させる。
10.2.1 前部ブドウ膜炎,虹彩毛様体炎anterior uveitis,iridocyclitis

² 概念
前部ブドウ膜炎とは虹彩炎・虹彩毛様体炎・毛様体炎・pars planitis などを
いう。

² 原因
{ 内因性
病原体が血行性に移行した場合や、自己免疫反応に起因する。
¤ 自己免疫性
¢ ベーチェット病
内因性のブドウ膜炎としては最多である。
¢ サルコイドーシス
¢ 若年性関節リウマチ
¢ 強直性脊椎炎
¢ ライター症候群Reiter's syndrome
¢ Lens-induced uveitis
¤ 感染症
¢ 角膜ヘルペス
¤ サルコイドーシス
¤ 悪性腫瘍
{ 外因性
外傷や外科手術に起因する。

² 症状
{ 羞明感
{ 霧視
{ 前房蓄膿hypopyon
前房下部に白血球が貯留したために、前房下方に白血球が水平線を形成した所見をいう。

² 合併症
高眼圧にも低眼圧にもなりうる。
{ 続発性緑内障
炎症の結果として隅角に滲出物が蓄積するから。
{ 眼球癆
毛様体炎が強いと毛様体での房水産生の低下により、低眼圧から眼球癆を招く。

² 治療
{ 散瞳薬
アトロピンを点眼し、毛様体筋を麻痺させて散瞳させることで虹彩の癒着を防止する。虹彩毛様体炎が主体となる病型が適応となる。

 後部ブドウ膜炎posterior uveitis
² 概念
網膜炎, 脈絡膜炎,retinal vasculitis, optic neuritis を含む。症状として視野狭窄や視力低下を招きやすく、予後も悪い。

² 原因
{ 原田病Vogt-Koyanagi-Harada disease
{ 急性網膜壊死, 桐沢型ブドウ膜炎
{ ベーチェット病
{ サルコイドーシス
{ 感染症
¤ 結核
¤ 梅毒
¤ ハンセン氏病
¤ トキソプラズマ
血行性にトキソプラズマ原虫が眼に移行する。
¤ 真菌性眼内炎
¤ サイトメガロウイルス網膜炎
{ MEWDS, multiple evanescent white dot syndrome
{ APMPPE, acute posterior multifocal placoid
{ Birdshot retinochoroidopathy
{ 地図状脈絡膜炎
{ 交感性眼炎
{ 急性網膜壊死(桐沢型ブドウ膜炎)

² 治療
{ ステロイド全身投与
網脈絡膜炎が主体となる病型が適応となる。

脈絡膜炎chorioiditis
² 原因
{ 原田病
{ 先天性トキソプラズマ症
² 検査所見
{ 眼底検査
黄斑部を中心に強膜を露出した網脈絡膜炎の瘢痕萎縮を呈する。

原田病Vogt-Koyanagi-Harada disease
² 概念
数日間の経過で高度の視力障害を起こす、両眼性の急性びまん性ブドウ膜炎である。急性に発症し、脈絡膜をはじめ皮膚や髄膜などの色素細胞を系統的に侵すものである。

² 病因
色素上皮のメラノサイトに対する自己免疫疾患であると考えられている。

² 症状
感冒症状や髄膜炎症状の後に突如として耳鳴り・感音性難聴・頭痛ではじまり、その数日後に両眼性の視力低下を来たす。皮膚症状は最後に出現する。
{ 感音性難聴
{ 視力低下
急激に両眼性に視力が低下する。
{ 色素脱失
頭髪や皮膚に斑状の脱色素が出現する。
¤ 皮膚白斑
¤ 脱毛症

² 検査所見
{ 眼底検査所見
¤ 脈絡膜の腫脹と混濁
¤ 夕焼け様眼底sunset fundus
脈絡膜の色素細胞が破壊されて脈絡膜血管が透見される所見であり、治癒後に見られる。
¤ 滲出性網膜剥離
{ 蛍光眼底像
脈絡膜側からの色素漏出点が多発し、剥離した網膜下に貯留する。
{ 髄液所見
無菌性髄膜炎を呈する。

² 治療
しばしば再燃する。
{ ステロイド大量療法
急性網膜壊死, 桐沢型ブドウ膜炎
サイトメガロウイルス網膜炎cytomegalovirus retinitis

交感性眼炎sympathetic ophthalmia
² 概念
片方の眼球に穿孔性外傷を受け、その後に他眼に発症するブドウ膜炎をいう。

² 病態生理
外傷時に脱出したブドウ膜が空気に触れ、変性した色素上皮に対して自己免疫反応が生じたために、健側のブドウ膜にも炎症が波及する。

² 症状
原田病に類似する。

² 治療
{ 薬物療法
¤ アトロピン点眼
¤ ステロイド全身投与
{ 外科療法
¤ 眼球摘出術
重症例に対しては健眼を助けるために受傷した眼球を摘出する。

眼サルコイドーシスocular sarcoidosis
多臓器に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の全身性疾患であり、眼病変としては肉芽腫性のブドウ膜炎を呈する。

² 病態生理
非乾酪性肉芽腫が全身の諸臓器に形成される。
{ 眼病変
¤ ブドウ膜炎uveitis
¢ 虹彩炎
¢ 脈絡膜炎
¤ 網膜静脈炎retinal phlebitis
¤ サルコイド結節
¤ 周辺虹彩癒着peripheral anterior synechia,PAS
隅角のサルコイド結節が吸収されて周辺虹彩の前面と角膜が癒着するものであり、房水の流出障害によって眼圧上昇を続発する。
{ 皮膚病変
¤ 皮膚サルコイド
¤ 瘢痕浸潤
¤ 結節性紅斑
{ 肺病変
特に肺胞領域の間質に肉芽腫が形成され、その近傍にはリンパ球および単球の浸潤が見られる。
¤ 両側肺門リンパ節腫脹

² 症状
羞明感や視力障害など両眼性に見られる。
{ 急激な視力低下

² 検査所見
{ 眼底所見
¤ 眼底のワックス様浸潤candle-wax spot
¤ 網膜の新生血管増生retinal neovascularization
¤ 真珠の首飾りstring of pearls
{ 血沈亢進
{ 高カルシウム血症
{ γグロブリン上昇
{ 血清ACE 上昇
{ ツベルクリン反応陰転化

² 合併症
{ 続発性緑内障
² 病理所見
封入体を持つ多核巨細胞の出現が見られる。

² 治療
{ 抗炎症剤としての副腎皮質ホルモンの投与特に心臓・中枢神経・腎臓などの生命予後に関係する臓器が侵された場合には絶対適応となる。

解剖3

水晶体lens
² 概念
無血管組織であり、房水から栄養されて嫌気的糖代謝によってエネルギーを産生する。

² 構造
虹彩の裏側で毛様小帯によって硝子体前面に固定されている。
{ 水晶体嚢lens capsule
水晶体を覆う透明なカプセルであり、前面を前嚢、後面を後嚢という。前面は水晶体上皮細胞の層で裏打ちされている。Na+-K+ 依存性ATPase を備え、水分の能動輸送を行うことによって水晶体の含水量を調節している。
{ 水晶体質lens substance
¤ 水晶体皮質
¤ 水晶体核
20 歳を過ぎたころから形成される。

1.9 硝子体
² 概念
硝子体は眼球の内部の大部分を満たしている無色透明のゲルで、99%が水で構成される。硝子体は水晶体の後ろに接し,眼球の奥では網膜と接する。その機能は、眼球の形を保つと同時に,入ってくる光を屈折させる点にある。

1.10 眼底fundus
² 構造
{ 視神経乳頭, 視神経円板
視神経および動静脈が出入りする。
{ 黄斑部macula
後網膜の中心部に存在する、黄色の部位であり、真ん中に中心窩が存する。ここには錐体細胞しかなく、視力がもっともよい部分である。

1.10.1 黄斑部macula
² 概念
後網膜の中心部に存在する、黄色の部位であり、真ん中に中心窩が存する。ここには錐体細胞しかなく、視力がもっともよい部分である。

² 構造
{ 中心窩fovea
{ avascular zone
網膜動脈を欠き、もっぱら脈絡膜から栄養される。
{ foveola
神経節細胞を欠く。

視覚路visual pathway
1. 視交叉optic chiasm
視床下部の漏斗の吻側にある扁平な線維板。その上面は第三脳室と前交連動脈に接し、下面は下垂体の上に乗っている。したがって下垂体前葉の腫瘍や脳脊髄液の充満による第三脳室の膨張が、視交叉を圧迫することがある。ここで左右の視神経は合一し、線維の交差が起こる。網膜の内側より発する線維はすべて対側へ交差し、外側より発するものは交差せずに同側の視索にはいる。

2. 視索
線維の8 割が外側膝状体に向かい、残りの2 割1は上丘腕を通って上丘と視蓋前域に達する。
² retinogeniculate tract
² retinopretectal tract
対光反射を担い、上丘と視蓋前域に向かう経路。

3. 外側膝状体
網膜は外側膝状体と点対点の対応をしている。さらに外側膝状体は第1 次視覚野に対応している。

4. 膝状体烏距路geniculocalcarine tract
視放線を形成する。外側膝状体より起こり、内包を通過し、第1 次視覚野である後頭葉の第17 野に終わる。1対光反射の経路となる

² 視放線occipitothalamic radiation
5. 視覚野, 有線野striate area
² 第1 次視覚野
Brodmann 第17 野であり、後頭葉の内側面で、烏距溝の周辺を占める。網膜より上半分は烏距溝の上縁に、下半分は下縁に投射する。黄斑部からの投射は後極の広い部分を占める。
² 視覚前野, 前有線野prestriate area
² 高次視覚野

 次視覚野
² 1 次視覚野の機能
{ 方向
{ 左右の視野の振り分け
{ 色覚
色の情報を形状と運動の情報から分離する。

解剖2

1.5.2 強膜sclera
² 概念
眼球のもっとも外側に位置する乳白色の硬い膜であり、前方は角膜とつながる。
構造的には腱に近く、血管が少なくてほとんど光を通さない。このため眼球内へ不必要な入光を防ぐとともに眼球の内部を保護するという機能を持つ。

1.6 ブドウ膜uveal tract
² 概念
ブドウ膜とは、強膜と網膜の中間にある血管や色素に富んだ膜であり、虹彩・毛様体・脈絡膜の総称である。網膜に血液を供給する役割を担う。

² 構成
{ 虹彩
{ 毛様体
虹彩を固定する役目とチン氏帯を介して水晶体を支え水晶体の厚さを
変える働きをするとともに、房水産生にもかかわる
¤ ora serrata
¤ ciliary process (pars plicata)
¤ pars plana
¤ zonule
¤ 毛様体筋ciliary muscle
{ 脈絡膜
内側の網膜と外側の強膜によってはさまれた薄い膜であり、多量の色素を含むことで眼球内を暗く保つ。血管が豊富であり、血管のない網膜外層に栄養を補給する機能も有する。

1.6.1 瞳孔pupil
虹彩iris
² 概念
毛様体が前方に延長したもの。

² 構造
虹彩には輪状筋(瞳孔括約筋) と放射状筋(瞳孔散大筋) があり、前者が収縮すると瞳孔が縮小し、後者が収縮すると瞳孔は拡大する。
{ 瞳孔括約筋pupillary sphincter muscle
動眼神経の副交感神経線維に支配され、この筋肉が収縮すると縮瞳する。
{ 瞳孔散大筋pupillary dilator muscle
虹彩後面に放射状に分布する筋であり、交感神経に支配され、これが収縮すると開瞳する。

毛様体ciliary body
² 概念
虹彩を固定する役目とチン氏帯を介して水晶体を支え,水晶体の厚さを変える働きをするとともに、房水産生にもかかわる。

² 構造
{ ora serrata
網膜との境界である。
{ ciliary process (pars plicata)
{ pars plana
{ zonule
{ 毛様体筋ciliary muscle
¤ 縱走筋(ブリュッケ筋Brucke 筋)
毛様体内部に縦方向に走る。
¤ 輪状筋(ミュラー筋Muller 筋??)
毛様体内部に輪状に走る平滑筋である。動眼神経の副交感性線維に支配され、縮瞳に関与する。

1.6.2 脈絡膜choroid
² 概念
胸膜と網膜の間に位置し、血管と色素に富んだ層。

1.7 網膜retina
² 網膜の層
網膜は外側より10 層より構成される。
{ 網膜色素上皮層pigment epitheliumsupporting cells for the neural portion of the retina (photopigment
regeneration, blood) it is also dark with melanin which decreases lightscatter within the eye.
{ 感覚網膜sensory retina
眼杯内壁から発生し、3 つのニューロンから構成される。
¤ 視細胞層Bacillary layer,Layer of photoreceptor cellscontains the outer segments and inner segments of the rod andcone photoreceptors.
¢ 捍体rod
もっとも光に鋭敏な細胞であり、暗所においても対象の輪郭を識別できるが、色を感じることはできない。視物質としてロドプシンを持つ。
¢ 錐体cone
3 種類存在し、それぞれが吸収波長を異にすることによって色を識別する。特に中心窩に多い。視物質としてヨードプシンを持つ。
¤ 外境界膜Outer limiting membrane
¤ 外顆粒層Outer Nuclear Layer (ONL) - cell bodies of rods &cones
¤ 外網状層Outer Plexiform Layer (OPL) - rod and cone axons,horizontal cell dendrites, bipolar dendrites
¤ 内顆粒層Inner Nuclear Layer (INL) - Nuclei of horizontal, bipo-lar and amacrine cells
¤ 内網状層Inner Plexiform Layer (IPL) - axons of bipolars (andamacrines), dendrites of ganglion cells
¤ 神経節細胞層Layer of Ganglion cells (GCL)Nuclei of the ganglion cells and displaced amacrine cells
¤ 神経線維層nerve ¯ber layer
¤ 内境界膜

² ニューロン細胞
{ 双極細胞
視細胞と神経節細胞を連結する。
{ 水平細胞horizontal cell
横方向に視細胞を結合する。側方抑制を担う。
{ アマクリン細胞, 無軸索細胞amacrine cell
横方向に神経節細胞同士を相互に結合する
{ 神経節細胞
視神経線維が起こる。
¤ M 細胞
大きな神経節細胞であり、各種の錐体からの反応を加算して運動と立体視に関係している。
¤ P 細胞
小さな神経節細胞であり、各種の錐体からの反応を引いて色覚に関係している。
1.7.1 視細胞photoreceptor
² 種類
{ 錐体cone
形態と色覚を担うほか、明所視での視感度曲線はヨードプシンの吸収曲線に近いため、明所視を担う。中心窩には錐体しかなく、視力がもっともよい部分である。
{ 捍体rod
わずか一個の光量子にも反応するなど、光に鋭敏に反応する。また暗所視での視感度曲線はロドプシンの吸収曲線に近く、暗所視を担う。中心窩には存在せず、周辺部に多い。
¤ 外節膜outer segment
光を受容する部位である。
¤ 内節膜inner segment
ミトコンドリアとリボゾームに富み、Na+-K+ ATPase が存在
する。

視物質
² 種類
{ ロドプシン
ロドプシンrhodpsin は捍体の視物質であり、opsin とretinal の複合体である。
¤ オプシンopsin
膜を7 回貫通する膜貫通型タンパク
¤ レチナールretinal
opsin に結合している。光照射によってcis からtrans に変換する。vitamin A から生成される。
1. 光照射によるロドプシンの光化学変化
(a) 光照射によりレチナールが11-cis 型からall-trans 型へ変わる
(b) ロドプシンはレチナールとオプシンに分解される

2. ロドプシンの回復
(a) 11-cis 型のビタミンA が色素上皮より捍体外節へと送り込まれる
(b) アルコール脱水酵素とNAD の作用によりビタミンA はレチナールとなる
(c) レチナールはオプシンと結合してロドプシンとなる
{ 錐体の視物質
錐体cone の視物質は, ヨードプシンiodopsin である。ヨードプシンは高照度下においてのみ反応し、色覚に関係する。3 原色に対応した3 種類の錐体がある。

解剖1

1.1 眼瞼eyelids
² 構造
{ 眼瞼筋
¤ 眼瞼挙筋
¤ 眼瞼板筋, ミュラー筋Muller's muscle
交感神経支配の平滑筋であり、眼瞼挙上に関与する。
{ 眼輪筋
² 眼瞼運動障害
{ 眼瞼下垂
{ 兎眼lagophthalmos
眼瞼の閉鎖不全によって眼球が露出している状態であり、長く続くと角膜が乾燥して角膜潰瘍となる。顔面神経麻痺が原因となる。

1.2 眼窩orbit
² 眼窩壁
{ 前頭骨
眼窩の屋根を構成する。
{ 蝶形骨sphenoid bone
蝶形骨の小翼は視神経孔を含み、眼窩の屋根を構成する。
{ 頬骨zygomatic bone
眼窩側壁の前面を構成する。
{ 上顎骨
{ 涙骨lacrimal bone
{ 篩骨ethmoid bone
{ 口蓋骨
眼窩は総計7個の骨によって構成され、上下内外側の4壁に分けられる。まず上壁は主として前頭骨眼窩面からなり、後端に蝶形骨小翼がある。下壁は上顎骨眼窩面が主であり、口蓋骨の眼窩突起がその奥に存する。内側壁は篩骨の眼窩板と涙骨からなり、外側壁は頬骨の眼窩面と蝶形骨の大翼によって形作られる。

² 陥穽
{ 眼窩上孔foramen supraorbitale
三叉神経(眼窩上神経) および眼動脈(眼窩上動脈) の通路。
{ 涙腺窩fossa glandulae lacrimalis
{ 視神経管canalis opticus
視神経および眼動脈の通路である。
{ 上眼窩裂¯ssura orbitalis superior
動眼神経、滑車神経、眼神経、外転神経、上眼静脈などの通路。
{ 下眼窩裂¯ssura orbitalis inferior
上顎神経(眼窩下神経)、頬骨神経、下眼静脈などの通路。眼窩下動脈はここから眼窩に入り、眼窩下孔へ抜ける。
{ 涙嚢窩 fossa sacci lacrimalis
鼻涙管が通る。
{ 頬骨眼窩孔 foramen zygomaticoorbitale
頬骨神経の通路。ここから頬骨管canalis zygomaticus が始まり、骨内で分岐して頬骨顔面孔と頬骨側頭孔に分岐する。
{ 眼窩下孔 foramen infraorbitale
眼窩下神経および眼窩下動脈および眼窩下静脈の通路。

1.3 眼の脈管
² 動脈系
{ 眼動脈ophthalmic artery
内頸動脈からの終枝のひとつである眼窩上動脈は、眼窩上孔を通って前頭部に抜け、以下の枝を出して眼窩の構造物に血液を供給する。
¤ 網膜中心動脈central retinal artery
視神経の中心を通り、視神経乳頭上で枝分かれしたのち、神経線維層で毛細血管網を形成しながらさらに分岐する。
¤ 涙腺動脈lacrimal artery
涙腺と上眼瞼に分布する。
¤ posterior ciliary artery
¢ long posterior ciliary artery
¢ short posterior ciliary artery
¤ medial palpebral artery
¤ supraorbital artery
¤ supratrochlear artery

² 静脈系
{ 網膜中心静脈
直接に海綿静脈洞に入るものと上下眼動脈に入るものがある。

1.4 結膜conjunctiva
² 概念
結膜とはまぶたの内面と強膜の前面をおおううすい透明な膜であり、眼球と限瞼をむすぶ組織である。結膜の知覚は、三叉神経の第1 枝と第2 枝によって支配されているため、角膜と同じく痛覚と冷覚だけしかない

² 構造
{ 眼瞼結膜palpebral conjunctiva
{ 円蓋部結膜forniceal conjunctiva
瞼結膜から球結膜へと移る間の部分。
{ 眼球結膜bulbar conjunctiva
角膜との境界で強膜の上をおおいっている部位。

1.5 外膜
1.5.1 角膜cornea
² 概念
角膜は眼球の最前部にあって強膜とともに眼球の前壁を構成する。なお角膜は無血管組織であり、栄養の補給と代謝産物の除去は前房水・蹄係網・涙水によってなされる。

² 機能
その機能は、眼球の形態を保持するとともに、透明性を維持して外界の光線を通過させ、かつ屈折させる点にある。
{ 屈折
眼の屈折力は約60 ジオプトリーであるが、角膜のそれは40 ジオプトリーと2/3 を占める。
{ 紫外線遮断

² 構造
{ 上皮
球結膜に連続する重層扁平上皮で、底部に基底膜を持つ。
{ ボーマン氏膜Bowman's membrane
細胞を欠く無構造の膜で、多数の小孔があり角膜神経の穿通枝で貫かれている。一度破壊されると再生されない。
{ 角膜実質stroma
均一な膠原線維が平行して配列し、全体として格子構造を形成する。
{ デスメ氏膜Descemet's membrane
内皮細胞で産生された膠原線維からなる基底膜であり、細胞成分を欠く。
{ 角膜内皮細胞corneal endothelium
1 層の細胞で構成され、重炭酸塩ポンプを持ち角膜の含水量を調節する。角膜実質から水を前房へと汲み出すポンプ機能を担うので、内皮細胞の障害によって角膜浮腫を招く。なお角膜内皮細胞はいったん脱落すると再生しないので、欠損部は周囲の内皮細胞が伸展してこれを補う。

2011年8月15日月曜日

角膜問題

角膜小テスト

1.単純ヘルペス角膜炎について次の①~⑤の内容が上皮型についての内容であればA,実質型についてならB,どちらにもあてはまる場合はCと記入せよ

1)(((A)))角膜知覚の低下が見られ
2)(((B)))壊死性角膜炎を呈する
3)(((A)))ステロイド薬の使用は禁忌である
4)(((C)))アシクロビル眼軟膏が治療には有用である
5)(((A)))地図状角膜炎を呈する

2.円錐角膜について正しいものには○、間違っているものには×を記入せよ
1)(((×)))細菌感染である
2)(((×)))円錐部の周辺に見られる色素沈着線をカイザー・フライシャー線という
3)(((○)))多くは両眼性である
4)(((×)))デスメ膜破裂によって水疱性角膜炎を生じる
5)(((○)))不正乱視による視力低下を呈する

3.円錐角膜の初期段階の治療法を記入せよ
(((ハードコンタクトレンズ装用による不正乱視の矯正)))

4.SCL装用者によく見られる感染性の角膜炎の名称を記入せよ
(((アカントアメーバ角膜炎)))

5.ゴールデンハー症候群に見られる症状を3つ記入せよ
(((角膜類皮嚢腫)))
(((副耳)))
(((耳痩孔)))

脳解剖

1. 脳の構造

・脳・・・大脳 小脳 脳幹 からなる
・脳幹・・・中脳 橋 延髄 からなる
※間脳を含む場合もある


2. 大脳

重さ:男性 1350g 女性 1250g

2-1. 構造

・大脳は溝によって区分される
・大脳縦裂:右脳と左脳を区別
・中心溝:前頭葉と後頭葉 を区分
・頭頂後頭葉:頭頂葉と側頭葉と区分

外側葉:側頭葉を区分

※上側:大脳縦裂により区分
※外側:前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉
※底面:橋・延髄
※断面:大脳皮質(灰白質)

・大脳皮質(灰白質)…神経細胞の細胞体の集合 厚さ:2~5mm
・大脳髄質(白質)…神経繊維が走行
・辺縁系  脳梁…白質から成り左右半球を連結
・大脳基底核…レンズ核・尾状核・扁桃体・海馬


2-2. 働き

高度な知能活動から本能的活動までさまざま

3. 小脳

重さ:135g(男性) 125g(女性)

3-1. 構造

脳幹(橋と延髄)の背側に乗っており、小脳テントで大脳と区分されている
※小脳と大脳を分ける硬膜のこと

3-2. 働き

運動の調整、身体の平衡感覚
※大脳が主に運動を制御し、小脳が調整している。小脳が障害されると、腕が震える、歩行時の身体傾斜、眼震などが起こる


4. 脳幹

4-1. 構造

・大脳半球と脊髄の間に存在
・上から 間脳・中脳・橋・延髄
・間脳は 視床と視床下部に分かれ、下垂体がぶらさがっている
※視交叉あたりにある

4-2. 働き

吸収・体温・心拍など基本的生命活動の中枢
※下垂体が腫れると視交叉が障害され、視野障害が起こる

瞳孔異常

瞳孔の異常

白色瞳孔 leukocoria

  • 概念 瞳孔が黄白色に輝いて見える状態をいう。
  • 原因
    • (((網膜芽細胞腫 )))
    • 偽網膜芽細胞腫
      • 先天性白内障
      • (((未熟児網膜症 )))
      • 網膜剥離
      • ブドウ膜炎
  • 検査所見 超音波検査、(((頭部CT撮影)))、眼底検査などが有効である。


アーガイル・ロバートソン瞳孔 (((Argyll Robertson pupil )))

  • 概念 両側性反射性の虹彩括約筋の麻痺であり、対光反射は直接間接とも(((消失)))するが(((輻輳反射)))は正常で輻輳によりすみやかに(((縮瞳)))する。 視蓋前域から Edinger-Westphal核間の障害であり、中枢性神経梅毒に特徴的だが、脱髄疾患や松果体腫瘍でも見られる。
  • 病態生理 対光反射は視神経からの求心性信号が視蓋前野とEdinger-Westphal核を経由して動眼神経に伝えられる反射であるが、 一方で輻輳反射は Edinger-Westphal核からすぐに大脳皮質に入力される。 このため視蓋前野から Edinger-Westphal核間の障害では対光反射は障害されるが輻輳反射は正常となる。
  • 原因
    • 中枢性神経梅毒,脊髄癆
    • 脱髄疾患
    • 松果体部腫瘍
    • 糖尿病
  • 症状 対光反射は直接間接とも消失し、(((瞳孔不同)))を呈するが、輻輳反射は正常で輻輳によりすみやかに縮瞳する。


ホルネル症候群 Horner syndrome

  • 概念 C8からT2までの交感神経系の障害によって起こる症候群であり、患側の(((眼瞼下垂)))・(((縮瞳)))・(((眼球陥入)))を三徴候とする。
  • 原因
    • 中枢性 視床下部から胸髄の脊髄側角に至る1次ニューロンの障害である。
      • Wallenberg症候群 延髄網様体には交感神経遠心路が走行しており、瞳孔散大筋は交感神経線維によって支配されるためである。
      • 脊髄空洞症
    • 末梢性 脊髄から交感神経幹にいたる2次ニューロンの障害か、もしくは交感神経幹から効果器にいたる3次ニューロンの障 害をいう。
      • 2次ニューロン障害,節前線維障害
        • 肺尖部の肺癌,Pancoast腫瘍
        • 腕神経叢節前損傷,引き抜き損傷
        • 開胸術による損傷
        • 星状神経節ブロック
      • 3次ニューロン障害,節後線維障害
        • 内頸動脈動脈瘤
  • 症状 瞳孔散大筋は交感神経に支配されているために病変と同側に以下の症状を呈する。
    • 縮瞳
    • 眼裂狭小 患側のミュラー筋(交感神経支配)の麻痺に起因する眼瞼下垂であり、動眼神経麻痺によるものほど強くない。
    • 眼球陥入
    • 発汗低下 anhidrosis 中枢性では全身の発汗が低下するが、末梢性では顔面・頸部・腕の発汗のみが低下する。
    • 鼻閉
  • 検査所見
    • 点眼試験 コカインやチラミンを点眼し、瞳孔の散大や眼瞼下垂の改善を見ることで、障害部位の推定が可能である。

眼瞼下垂 bleopharoptosis

  • 概念 上眼瞼の挙上不全をいう。
  • 原因
    • 先天性 生まれながらに眼瞼挙筋の発育が不良なもので、家族発生が見られる。治療は挙筋短縮術を行なう。
    • 後天性
      • 神経性 動眼神経麻痺の部分症状として生じる。
        • (((ホルネル症候群))) Horner syndrome
        • (((多発性硬化症 )))
        • 糖尿病性神経症
      • 筋性
        • (((重症筋無力症 )))
      • 外傷性

視野障害

視野障害 visual field defects

  • 分類
    • 視野狭窄
      • 求心性視野狭窄 視野の周辺から均等に視野が欠けていくものをいう。網膜色素変性症や(((ヒステリー)))が原因となる。 メチル水銀は後頭葉視中枢に集積して求心性視野狭窄を来たす。
      • 切痕視野狭窄
    • 半盲 hemianopia
      • 異名半盲 (((視交叉)))レベルが障害され、両眼視野の反対側半分が欠損する。
      • 同名半盲 homonymous hemianopia 視索より中枢側の視覚伝導路障害で生じる。(((側頭葉)))腫瘍や一側の後大脳動脈閉塞などが主な原因となる。
    • 単眼性視野障害 片側の視神経の障害による、片眼のみの視野障害をいう。
    • 暗点
      • 中心暗点 注視点の暗点を言う。
      • 盲点中心暗点
      • 傍中心暗点
      • 輪状暗点 ring scotoma 中心視野と周辺視野は保たれるが、中間部分が欠損したものである。 網膜色素変性症の初期や開放隅角緑内障で見られる。

視野狭窄


  • 種類
    • 求心性視野狭窄 視野全体が狭くなるものをいう。たとえばメチル水銀は後頭葉視中枢に集積して求心性視野狭窄を来たす。
    • 切痕視野狭窄

半盲 hemianopia


  • 異名半盲 視交叉レベルが障害され、両眼視野の反対側半分が欠損する。
    • (((両耳側半盲))) bitemporal hemianopia 視交叉が正中部から圧迫されて生じる症状であり、特に下垂体腫瘍が原因となる。
    • (((両鼻側半盲))) 内頸動脈は視神経交叉の両側を走行するため、内頸動脈瘤にて両鼻側半盲をきたすことがある。
  • 同名半盲 homonymous hemianopia 視索より中枢側の視覚伝導路障害で生じる。側頭葉腫瘍などが主な原因となる。
    • 黄斑回避 macular sparing 同名半盲の際に、視野の中心が小さく残存する状態を指す。

夜盲症 nyctalopia,night blindness

  • 概念 光覚の減弱または暗順応が遅延した状態であり、網膜の桿体機能の障害に起因する。
  • 分類
    • 先天性
      • (((先天性停止性夜盲)))
        • (((小口症))) Oguchi's disease
        • (((白点状網膜炎 )))retinitis punctata albescens
        • 眼底黄斑症
      • 先天性進行性夜盲 網膜色素変性症で見られる。
        • Laurence-Moon-Biedl症候群
    • 後天性夜盲
      • ビタミンA欠乏症

飛蚊症 myodesopsia, floaters

  • 概念 視野の中を虫が飛んでいるように見える状態をいう。
  • 病因 硝子体疾患や網膜剥離など網膜に近い部位の疾患で生じ、角膜や水晶体の疾患では生じない。
    • 硝子体出血
    • 後部硝子体剥離
    • 網膜剥離
    • ブドウ膜炎

斜視

斜視 strabismus

 眼位の異常である斜位に(((両眼視機能)))の異常が加わったものを斜視という。
斜視とは、物体を注視するとき、片方の眼は目標を固視するが、他眼は異なった方向に偏位して、目標に両眼の注視 線が定まらないものをいう。
  • 分類
    • 原因による分類
      • 共同性斜視(狭義の斜視) concomitant strabismus 両眼の眼球運動に共同性があり、注視方向によって偏位度の(((変らないもの)))。 多くは先天性であり、発育の過程で順応しているため(((複視)))を伴わない。
      • 麻痺性斜視 paralytic strabismus 両眼の眼球運動に共同性がなく、注視方向によって偏位度に(((差があるもの)))。複視を伴う。 現在では斜視ではなく、眼筋麻痺に分類される。
    • 目の位置による分類
      • 内斜視 内斜視は斜視の中で最も多い。
        • 調節性内斜視 調節をするときに過剰な眼球の内転が起こり斜視となるもので、大部分が遠視が原因となる。
        • 非調節性内斜視 生後6ヵ月以内の早期に発見される恒常斜視である。
      • 外斜視
      • 上下斜視 プリズムレンズで矯正する。
      • 回旋斜視
    • 斜視眼による分類
      • 交代斜視 斜視眠が左右どちらか一方と決まっていないもの。
      • 片限斜視 斜視眠が左右どちらかに決まっているもの。
    • 状態による分類
      • 恒常斜視 恒常的に斜視状態にあるもの。
      • 間欠斜視 ある条件下で斜視になるもの。
  • 治療 治療の目的としては,(1)眼位の矯正,(2)両眼視機能の正常化,(3)視力改善の三つになる。
    • 手術
    • コンタクトレンズ,メガネを使う方法 斜視の原因となっている遠視や近視を矯正し、両眼視をさせる。
    • 遮閉法 眼帯などを用いて不同視のある弱視・斜視に行なう。
    • プリズム処方 メガネにプリズムを入れて光を屈折させて斜視眼を正常眼と同じ視標が見えるようにする方法。
    • 両眼視機能訓練 大型弱視鏡などを用いて両眼視機能を向上させる方法。
    • ボツリヌス毒素筋注 過緊張の筋肉を麻痺させるために筋肉にボツリヌス毒素を注射する方法。


内斜視 esotropia

  • 概念 内斜視は斜視の中で最も多い。
  • 分類
    • 調節性内斜視 accomodative esotropia 調節をするときに過剰な眼球の内転が起こり斜視となるものである。 遠視が原因であることがはとんどであり、凸レンズで矯正することで眼位が改善する。
    • 非調節性内斜視 視力障害に起因し、(((生後6ヵ月)))以内の早期に発見される恒常斜視である。 視機能への影響も大きいので早期手術が必要となる。

眼球運動障害 ocular movement disorder

  • 分類
    • (((核上性)))運動障害
      • 水平注視麻痺
      • 垂直注視麻痺
      • 核間性麻痺
      • 開散麻痺 divergence palsy 開散反射の異常によって遠方視で複視が出現する。
      • 輻輳麻痺 輻輳反射の異常によって近方視で複視が出現する。
    • (((核・核下性)))運動障害
      • 神経性麻痺
        • 動眼神経麻痺
        • 滑車神経麻痺
        • 外転神経麻痺
      • 筋性麻痺


動眼神経麻痺 oculomotor nerve palsy

  • 概念 動眼神経は中脳上丘に神経核があり、外眼筋を支配する線維と瞳孔括約筋および網様体筋を支配する副交感性線維がのびる。
  • 分類
    • 核上性麻痺 前頭葉皮質、後頭葉皮質、橋・中脳部、上丘レベルの障害に起因する。
      • (((Parinaud)))徴候
      • (((Argyll-Robertson)))瞳孔
    • 核性麻痺 中脳上丘にある動眼神経核の障害に起因する。 上眼瞼挙筋および上直筋は下位運動ニューロンから二重支配を受けているため麻痺を来たさない。 脳血管障害・多発性硬化症・ウェルニッケ脳症・脳幹腫瘍などが原因となる。
    • 核下性麻痺(末梢性麻痺) 末梢の動眼神経が障害されたことによって、多くの場合、完全麻痺を来たす。 糖尿病性神経症・内頸脳動脈瘤・脳腫瘍などが原因となる。
    • 核間性麻痺 中脳から頸髄にかけてみられる内側縦束 (((MLF))) が中脳レベルで障害されたもの。 患側眼球の内転が障害されるが、(((輻輳反射)))は正常である。
      • MLF症候群
  • 原因
    • 脳ヘルニア
    • 脳血管障害
    • 脳腫瘍
    • 内頸動脈の脳動脈瘤 動脈瘤の増大を示唆する所見である。
    • 多発性硬化症
    • ギラン・バレー症候群
    • 糖尿病
  • 症状 そもそも動眼神経は上眼瞼挙筋・上直筋・内側直筋・下斜筋・下直筋に分布し、主に眼球を内転させる作用をもつと ともに毛様体神経節から伸びる副交感線維が瞳孔括約筋および毛様体筋を支配している。
    • 外眼筋麻痺 眼球は内転が障害され、外転位をとる。
      • 複視
      • 眼瞼下垂 上眼瞼挙筋の麻痺に起因する。
    • 副交感線維の障害による症状
      • 瞳孔強直 瞳孔反応の欠如、すなわち散瞳・対光反射消失・輻輳反射消失をいう。

MLF症候群,核間性眼筋麻痺 internuclear ophthalmoplegia

  • 概念 一側性の内側縦束 MLF の障害によって病巣側の眼球の内転麻痺が生じるが、動眼神経核は障害されていないので輻輳反射は正常なもの。
  • 病態生理 そもそもMLFは中脳被蓋中央部で中心灰白質の腹側に位置し、主に橋のPPRFと中脳の動眼神経核を連絡している。 MLFの一側性の障害では、同側動眼神経核の内直筋支配核と対側外転神経核との連絡が障害され、病側の内直筋障害 が見られることになる。
    対光反射は視神経からの求心性信号が視蓋前域とEdinger-Westphal核を経由して動眼神経に伝えられる反射であるが、 一方で輻輳反射は Edinger-Westphal核からすぐに大脳皮質に入力される。
  • 原因
    • 多発性硬化症
    • 脳幹部腫瘍
    • 脳底動脈の梗塞
  • 症状
    • 側方注視不可 同側動眼神経核の内直筋支配核と対側外転神経核との連絡障害により、側方注視のさいに患側眼球が対側へ内転 できなくなる。
    • 輻輳反射正常 そもそも輻輳反射は網膜からの求心性信号がすぐに中脳の Edinger-Westhal核に入力され、そこから大脳皮質に投 射される。出力経路にもMLFを介さないので輻輳反射は障害されない。


Parinaud syndrome

  • 概念
  • 原因 視蓋前域の障害に起因する。
    • 松果体部腫瘍
  • 症状
    • 上方注視麻痺
    • 人形の目現象消失 absence of doll's eye movement 脳幹障害がなければ頭を急速に上下左右に動かすと眼球はその運動方向と反対に動く(人形の目現象)。 人形の眼現象が消失し、頭部とともに眼球が動けば、脳幹や中脳の障害を示唆する。
    • 輻輳麻痺
    • 対光反射消失


複視 double vision,diplopia

  • 概念 外界の像が左右眼の対応点でない部位に投影されること(網膜対応異常 abnormal retinal correspondence)。
  • 分類
    • 単眼性 monocular 片眼を覆っても開眼している側で複視が出現するもの。
    • 両眼性 binocular 両眼視のみに複視が出現するもの。眼球運動の異常が示唆される。
    • 同側性複視 仮像が患側に見えるものをいう。
    • 交叉性複視 仮像が健側に見えるものをいう。
  • 原因
    • 動眼神経麻痺
  • 検査所見
    • 複像検査 Hess test 赤緑眼鏡を用いて複視の状態を評価する検査である。

涙器検査

a) Schirmer検査

        i) 第1法

 ・1903年にSchilmerによって開発された方法
 ・(((基礎分泌&反射性分泌)))を測定
・Schirmer紙(35×5mm)を5mmで折り曲げ、下結膜嚢耳側に挿入し、(((5)))分後、検査用紙の濡れた部分の長さを折り目から測定。
・濡れた部分の長さが10mm~20mmであれば正常、
・(((5)))mm以下で異常
・点眼麻酔を使用しない
       

ⅱ)第1法変法

・(((基礎分泌)))を測定
・点眼麻酔を使用する(痛み軽減のため)
・第1法より測定値は減少
  

ⅲ)第2法

・(((反応性分泌)))のみ測定
・点眼麻酔を使用する
・鼻腔に綿棒を挿入し(((鼻粘膜刺激)))
・(((10)))mm以下を異常


b)着色綿糸法

・Schirmer試験紙の代わりに、フェノールレッド綿糸を使用
・綿糸を(((下眼瞼耳側1/3)))の部位に(((15)))秒挿入
・(((10)))mm以下を異常
・簡便に行えるが、結果にばらつきが多い


 c) 涙液層破壊時間(tear film breakup time:BUT)

・涙液の質測定。
・涙液の安定性をみる最も簡単な手段。
・涙液の乾燥時間を観察。
・角膜を1%フルオで染色→数回瞬目→開瞼を維持→
・角膜上の涙液層破壊時間を測定。ブルーフィルターで観察。
・検査の際、眼瞼を検者の指で持ち上げてはならない
・正確には3回測定した平均値。正常:10秒以上
・異常:5秒以下

    →原因:①涙液量減少、②ムチン不足、
            ③瞬目障害による涙液拡散低下
            ④角膜上皮障害に伴う粘液層の破壊


1-2.  涙道の検査

    a)フルオレセイン点眼試験

    ・2%フルオレセイン点眼後、粘膜からの色素消失時間を測定
    ・正常:3分
    ・この時間が長いと涙液排出が不十分だと分かる

    b)通水

・眼科でよく使われる
・生理食塩水を涙点から涙小管へ注入し、鼻腔に流出するかどうか
・流出OK→涙液排出系開存
・開存NGで、涙嚢炎の場合→膿が逆流

  2.涙器疾患

2-1. 先天性鼻涙管閉塞

・原因:鼻涙管内の膜が開いていない
・症状:出生直以後からの流涙・眼脂
・治療法:涙管マッサージして自然治癒・涙管プジー
・関連:乳児涙嚢炎(涙嚢感染)→農性眼脂・眼瞼皮膚炎


2-2. 涙嚢炎

a) 慢性涙嚢炎

・原因:鼻涙管の閉塞がベース
    涙嚢の細菌感染し膿が貯留した状態
・症状:片眼性
    流涙・眼脂・通水により膿性粘液逆流
・治療法:涙管プジー
     抗生剤投与(洗浄・点眼・点滴・内服など)
     オペ(涙嚢鼻腔吻合術・涙嚢摘出術)

b) 急性涙嚢炎

・原因:慢性涙嚢炎がひどくなった状態
・症状:涙嚢部の発赤・腫脹・疼痛
・治療法:・抗生剤投与(点眼・内服など)
      ・切開排膿
      ・オペ(涙嚢鼻腔吻合術・涙嚢摘出術など)









c)シェーグレン症候群

・自己免疫疾患の一つ。女性に多い。
・涙腺機能が極端に低下し、ほかの分泌腺の分泌も少なくなり、目や口、鼻などが乾燥する。
・涙液と唾液の分泌が障害
・涙腺&唾液腺に対する自己免疫反応→両腺組織破壊
・各結膜びらん、
・乾燥感、異物感、眼痛、視力低下 参考→解剖、


2011年8月13日土曜日

40回 午後

1 血液凝固(止血)に関与するのはどれか。
1.ビタミンA
2.ビタミンB2
3.ビタミンB6
4.ビタミンE
5.ビタミンK

2 加齢による解剖学的変化で最も視機能に影響するのはどれか。
1.視細胞
2.毛様体筋
3.瞳孔括約筋
4.水晶体実質
5.角膜内皮細胞

3 神経線維腫をきたすのはどれか。
1Duane症候群
2Marfan症候群
3Sturge-Weber症候群
4Tay-Sachs
5von Recklinghausen

4 疾患と病因の組合せで正しいのはどれか。
1.緑内障―――――――膠原病
2.黄斑円孔――――――感染症
3.先天内斜視―――――免疫異常
4.重症筋無力症――――神経伝達不良
5.網膜色素変性――――色素代謝異常

5 糖尿病による合併症はどれか。2つ選べ。
1.貧血
2.腎症
3.胃潰瘍
4.肝脾腫
5.末梢神経麻痺

6 空間位置知覚をつかさどるのはどれか。
1.前頭葉
2.頭頂葉
3.側頭葉
4.後頭葉
5.海馬

7 房水の流出路はどれか。
1Descemet
2Henle線維層
3Lockwood靱帯
4Schlemm
5Tenon

8 視能訓練士の業務でないのはどれか。
19方向眼位
2.視覚誘発脳波検査
3.テンシロン(エドロホニウム塩化物)試験
4Schirmer試験
5Titmus stereo test

9 心理的要因で発症するのはどれか。2つ選べ。
1.眼振
2.チック
3.指眼現象
4.調節けいれん
5Marcus Gunn現象

10 身体障害者手帳が交付されるのはどれか。2つ選べ。
1.同名半盲
2.片眼正常で他側義眼
3.麻痺性斜視による複視
4.視力正常の赤緑色覚異常
5.矯正視力が右0.01、左0.01

11 瞳孔間距離60㎜の人が明視距離(25㎝)にある視標を固視した場合、プリズムジオプターでの輻湊角はどれか。
16
212
324
436
548

12 瞳孔径を関係するのはどれか。2つ選べ。
1.偏光
2.干渉
3.球面収差
4.固視微動
5.焦点深度

13 暗所視の分光視感度のピークはどれか。
1450nm
2470nm
3490nm
4510nm
5530nm

14 先天赤緑色覚異常で誤認しやすい組合せはどれか。2つ選べ。
1.赤―――――――――白
2.オレンジ――――――紫
3.青 紫―――――――黄
4.ピンク―――――――白
5.緑―――――――――茶

15 誤っているのはどれか。
1.分数視力の20/20は小数視力の1.0に相当する。
2.分数視力は最小視角の逆数を小数で表したものである。
3.視力1.0Landolt環視標の切れ目は視角0.1度である。
4.標準式視力表はLandolt環のみで構成された視力表である。
5.検査距離5mの視力1.0Landolt環視標の切れ目は1.5㎜である。

16 正しい組合せはどれか。2つ選べ。
1EEG―――――――脳波
2EMG―――――――筋電図
3ENG―――――――視覚誘発脳波検査
4EOG―――――――網膜電図
5ERG―――――――電気眼振図

17 プリズムの校正位置で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.前額面位置
2.主平面位置
3.基底面位置
4.最小偏角位置
5Prenticeの位置

18 角膜面を基準にして、-2Dの近視眼の近点距離が眼前12.5㎝である。その調節力の半分を使用する場合、網膜共役点と眼との距離で適切なのはどれか。
15cm
220cm
350cm
4200cm
5500cm

19 レンズメータで測定されるのはどれか。
1.物側主点屈折力
2.像側主点屈折力
3.前頂点屈折力
4.後頂点屈折力
5.眼鏡面屈折力

20 コンタクトレンズの周辺部の構造で正しい組合せはそれか。2つ選べ。
1a――――ブレンド
2b――――エッジ
3c――――ベベル
4d――――エッジリフト
5e――――ベースカーブ

21 後天内斜視で行う必要がないのはどれか。
1.眼底検査
2.屈折検査
3.輻湊検査
4.頭部画像検査
5.不等像視検査

22 手動レンズメータで遠近累進屈折力レンズ眼鏡の遠用度数を測るときの測定部位はどれか。ただし、②はアイポイントを示す。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

23 屈折度-2.00Dcyl1.00D90°の眼を±0.50Dのクロスシリンダーを使用して屈折検査を行うこととした。乱視の矯正に凹円柱レンズを使用する場合、正しいのはどれか。
1.矯正前の最小錯乱円は網膜よりも後方にある。
2.乱視矯正前の球面レンズ矯正は-2.50Dである。
3.乱視矯正前の前焦線の屈折度は-2.00Dである。
4.乱視の検査の前に+0.50Dの球面レンズを加える。
5.クロスシリンダーの回転で乱視度数は-0.50Dと-1.50Dになる。

24 Amslerチャート全体の視角はどれか。
15°
210°
315°
420°
525°

25 視野検査で正しいのはどれか。
1.背景輝度は31.5asbである。
2.背景の反射率は100%とする。
3Humphrey視野計の最高輝度は1,000asbである。
4Humphrey視野計の視標の大きさは64m㎡である。
5Goldmann視野計のフィルターをeからdに変えると輝度は5dB変化する。

26 網膜疾患の色覚検査に適しているのはどれか。2つ選べ。
1.アノマロスコープ
2.パネルD-15テスト
3.ランタンテスト
4.石原色覚検査表
5.標準色覚検査表

27 円柱回折格子を用いた立体視検査はどれか。
1Frisby stereo test
2Lang stereo test
3random dot E stereo test
4Titmus stereo test
5TNO stereo test

28 次の網膜対応検査を日常視に近い順に並べたときに4番目になるのはどれか。
1.残像検査
2Worth4灯検査
3.大型弱視鏡検査
4Bagolini線条検査
5.位相差ハプロスコープ検査

29 左上方視で回旋偏位が最大となる麻痺筋はどれか。
1.右下直筋
2.右上斜筋
3.右下斜筋
4.左上斜筋
5.左下斜筋

30 眼瞼下垂が認められないのはどれか。
1.動眼神経麻痺
2.重症筋無力症
3.外眼筋ミオパチー
4Duane症候群
5general fibrosis syndrome

31 Hess赤緑試験が有用なのはどれか。
1.固定斜視
2Fisher症候群
3Möbius症候群
4Parinaud症候群
5.眼窩吹き抜け骨折

32 AC/A比で正しいのはどれか。
1.測定には非調節視標を用いる。
2.非屈折性調節性内斜視では高値となる。
3.ピロカルピン塩酸塩点眼によって増加する。
4.単位はプリズムジオプター/メートルである。
5heterophoria法ではgradient法よりも低値となる。

33 涙の反射性分泌に関与するのはどれか。
1.動眼神経
2.滑車神経
3.三叉神経
4.外転神経
5.顔面神経

34 眼底写真を示す。記録写真としての問題点はどれか。2つ選べ。
1.上下が逆である。
2.光軸がずれている。
3.カメラを押し過ぎている。
4.カメラを引き過ぎている。
5.睫毛が光路を邪魔している。

35 フラッシュERGの所見で非進行性の夜盲所見を示すのはどれか。
1.陰性型
2.減弱型
3.増強型
4.平坦型(消失型)
5.律動様小波異常型

36 視能訓練士法で謝っているのはどれか。
1.視能訓練士はチーム医療への参加を義務付けられている。
2.視能訓練士の診療の補助行為は本来は看護師の独占業務である。
3.眼科に係る検査ができるようになったのは平成5年からである。
4.両眼視機能障害者の検査と訓練とを業とするものと定義されている。
5.視能訓練士は医師の指示がなくても矯正視力検査を行うことができる。

37 角膜障害を合併しやすいのはどれか。2つ選べ。
1.動眼神経麻痺
2.三叉神経麻痺
3.顔面神経麻痺
4.重症筋無力症
5.慢性進行性外眼筋麻痺

38 眼内レンズの度数を決定するのに必要なのはどれか。2つ選べ。
1.視力検査
2.超音波Aモード
3.オフサルモメータ
4.レフラクトメータ
5.スペキュラマイクロスコープ

39 急性緑内障発作で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.縮瞳する。
2.頭痛を伴う。
3.前房が深い。
4.強度近視に多い。
5.対光反射が消失する。

40 白色瞳孔をきたすのはどれか。2つ選べ。
1.眼白子症
2.先天緑内障
3.網膜芽細胞腫
4Coats
5Vogt-小柳-原田病

41 夜盲をきたすのはどれか。2つ選べ。
1.小口病
2.加齢黄斑変性
3.網膜色素変性
4.網膜中心動脈閉塞症
5Vogt-小柳-原田病

42 眼球突出をきたすのはどれか。2つ選べ。
1.甲状腺眼症
2.重症筋無力症
3.眼窩吹き抜け骨折
4Crouzon
5Marfan症候群

43 眼球運動痛をきたすのはどれか。
1.視神経炎
2.甲状腺眼症
3.うっ血乳頭
4.非動脈炎性虚血性視神経症
5Leber遺伝性視神経症

44 上方注視麻痺をきたすのはどれか。
1Duane症候群
2MLF症候群
3Möbius症候群
4Parinaud症候群
5Sjögren症候群

45 先天色覚異常で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.男性に多い。
2.赤緑異常が多い。
3.常染色体優性遺伝である。
4.石原式色覚検査表で異常があれば2色覚(色盲)である。
5.パネルD-15テストで2色覚(色盲)と異常3色覚(色弱)とを判別できる。

46 交代性上斜位、潜伏眼振および下斜筋過動症を合併しやすいのはどれか。
1Brown症候群
2Duane症候群
3.先天内斜視
4.調節性内斜視
5.外転神経麻痺

47 学童期の社会性で正しいのはどれか。
1.境界人
2.人見知り
3.モラトリアム
4.仲間集団意識
5.第1次反抗期

48 融像訓練で正しいのはどれか。
1.感覚性融像の訓練は調節の介入を防いで行う。
2.運動性融像の訓練は融像側方移動訓練を行う。
3.融像幅増強訓練は融像の限界点から開始する。
4.融像分離結合訓練はアームを0度にセットして行う。
5.異常融像の除去訓練は中心窩と道づれ領とを刺激する。

49 内視現象を利用した訓練機器はどれか。
1.ポラテスト
2.ビズスコープ
3.カイロスコープ
4.コージナトール
5.オイチスコープ

50 幼児の遮閉治療の適応はどれか。
1.両眼-8.0Dの近視
2.両眼+8.0Dの遠視
3.片眼発達白内障術後
4.潜伏眼振を伴う斜視
5.片眼正視、他眼-3.0Dの近視

51 疾患と手術法の組合せで正しいのはどれか。
1.眼位性眼振――――――Jensen
2.交代性上斜位―――――Kestenbaum
3Duane症候群―――――上斜筋移動術
4.先天上斜筋麻痺――――原田-伊藤法
5.後天固定内斜視――――上直筋・外直筋縫合術

52 斜視手術の適応となるのはどれか。
1.斜位近視
2.潜伏眼振
3.微小斜視
4.陽性γ角異常
5.屈折性調節性内斜視

53 眼鏡のフィッティングで正しいのはどれか。
1.鼻根部はパッドで調整する。
2.常用眼鏡の前傾角は35°にする。
3.テンプルの長さは瞳孔間距離に合わせる。
4.アイポイントはレンズメータで測定する。
5.頂間距離はレンズ度数によって調整する。

54 弱視のない斜視でプリズム治療が適応となるのはどれか。2つ選べ。
1.急性内斜視
2.感覚性内斜視
3.部分調節性内斜視
4.屈折性調節性内斜視
5.非調節性輻湊過多型内斜視

55 ジスチグミン臭化物点眼薬で正しいのはどれか。
1.眼圧下降作用を有する。
2.交感神経作動薬である。
3.隔日性内斜視に用いられる。
4Moore-Johnson法では弱視眼に点眼する。
5Moore-Johnson変法では健眼に点眼する。

56 生理的複視訓練で正しいのはどれか。
1.顕性斜視の状態で行う。
2.両眼の中心窩を刺激する。
3.固視目標は斜視眼の道づれ領に投影される。
4.耳側網膜の刺激は固視目標よりも遠方に刺激視標を置く。
5.中心窩近傍の抑制除去は固視目標と刺激視標とを近づける。

57 flashing methodで正しいのはどれか。
1.固視交代を促す。
2.視差のある図形を用いる。
3.両眼の中心窩を刺激する。
4.外斜視の顕性化をさせて行う。
5.固視眼の遮閉-非遮閉を繰り返す。

58 融像が全くできない場合の訓練はどれか。
1.融像幅増強訓練
2.融像側方移動訓練
3.融像分離結合訓練
4.動的両眼網膜刺激法
5fusion lock training

59 偏心固視と顕性斜視があるとき両眼の中心窩に像が投影されるのはどれか。
1.大型弱視鏡
2.残像検査
3.残像ひきとり試験
4Bagolini線条検査
5Worth4灯試験

60 右へ顔のまわしがみられるのはどれか。2つ選べ。
1.右外直筋麻痺
2.左上直筋麻痺
3.右上斜筋麻痺
4.左上斜筋麻痺
5.右下斜筋麻痺

61 眼振阻止症候群で正しいのはどれか。
1.前庭眼振である。
2.頭位異常はない。
3.外転神経麻痺がある。
4.乳幼児期に発症する。
5.斜視角の増加とともに眼振も増加する。

62 複視を伴うのはどれか。
1.開散麻痺
2.調節麻痺
3.水平注視麻痺
4.共同性内斜視
5.慢性進行性外眼筋麻痺

63 大型弱視鏡による9方向眼位検査の結果を示す。麻痺筋はどれか。ただしL/Rは左眼上斜視、EXは外方回旋斜視を示す。
1.右上直筋
2.左上直筋
3.右下斜筋
4.左下斜筋
5.左下直筋

64 正しいのはどれか。
1.インシデントとは医療事故のことである。
2.医療技術は時や場所にかかわらず一定である。
3.医療従事者は医療事故の被害者に含まれない。
4.視能訓練士は一次救命処置の施行に制限を受けない。
5.「ヒヤリ・ハット」はアクシデントと同義語である。

65 流行性角結膜炎で正しいのはどれか。
1.診断がついたら登校を禁止する。
2.感染予防のためにマスクを着用する。
3.感染拡大を予防するために家族も受診させる。
4.感染が疑われる患者が来たら保健所に報告する。
5.院内感染予防のために患者の診察を拒否してよい。

66 50歳の男性。頂間距離12㎜で-10.00Dの眼鏡レンズで完全矯正されている。この眼鏡を頂間距離25㎜になるまで前方にずらして近方を見やすくしたい。近用付加度数の効果はどれか。
10.25D
20.75D
31.50D
42.25D
53.00D

67 30歳の男性。眼位は正位であるが、両眼+8.00Dの眼鏡の光学中心が右眼耳側に5㎜、左眼上方に4㎜ずれていた。眼鏡を装用したときの遠見斜視角に最も近いのはどれか。
12⊿内斜位 2⊿右上斜位
22⊿外斜位 2⊿右上斜位
32⊿外斜位 2⊿左上斜位
44⊿内斜位 3⊿左上斜位
54⊿外斜位 3⊿左上斜位

68 36歳の女性。外斜視を主訴に来院した。-25°の恒常性外斜位があり、大型弱視鏡による自覚的斜視角検査では左右の像が同時に見えないという。網膜対応はどれか。
1.対応欠如
2.二重対応
3.一眼の抑制
4.調和性異常対応
5.不調和性異常対応

69 58歳の男性。視力低下と変視症とを主訴に来院した。視力は右1.2(矯正不能)、左0.2(矯正不能)。走査レーザー検眼鏡(SLO)のIR(赤外線)画像とOCT(光干渉断層計)画像とを示す。考えられるのはどれか。
1.黄斑上膜
2.黄斑円孔
3.加齢黄斑変性
4.卵黄状黄斑変性
5.中心性漿液性脈絡網膜症

70 56歳の男性。健康診断で眼底異常を指摘され来院した。右眼の眼底写真と蛍光眼底写真とを示す。所見として見られるのはどれか。2つ選べ。
1.線状出血
2.新生血管
3.黄斑浮腫
4.乳頭浮腫
5.毛細血管瘤

71 28歳の女性。テレビを見ていると視野の右方にギザギザしたちらつきを自覚したため来院した。ちらつきは次第に拡大し20分ほどで消失し、その後しばらく頭痛を伴ったという。考えられるのはどれか。
1.網膜裂孔
2.閃輝暗点
3.閉塞隅角緑内障
4.硝子体閃輝性融解
5.網膜中心動脈閉塞症

72 56歳の男性。6か月前からの左眼の霧視を主訴に来院した。視力は右1.2(矯正不能)、左0.5(矯正不能)。眼底に異常を認めない。交互点滅対光反射試験(swinging flashlight test)と視野とを示す。考えられる病変部位はどれか。2つ選べ。
1.網膜
2.視神経
3.視交叉
4.視放線
5.後頭葉視中枢

73 25歳の男性。スノーボードをしていて転倒し、意識消失の状態で搬入された。1週後に意識が回復したが、強い複視を自覚したため、眼科を受診した。第一眼位は正位、上方視で10⊿外斜視、下方視で20⊿内斜視を認める。20°外方回旋複視を認める、右への頭位傾斜で右上斜視、左への頭位傾斜で左上斜視を認める。この症例で正しいのはどれか。
1A型斜視である。
2.顎上げ頭位をとる。
3.原田-伊藤法の適応である。
4.右への顔のまわしがみられる。
5.膜プリズムを眼鏡の下方に貼る。

74 60歳の女性。左眼外方偏位の治療を希望し来院した。偏位は小児期に出現したが放置しており、5年前から徐々に増悪してきたという。視力は右1.0(矯正不能)、左1.0(矯正不能)。複視はなく、大型弱視鏡検査で同時視と交差感はみられない。眼位は、遠見で60⊿外斜視、近見で65⊿外斜視である。術後に背理性複視が生じる可能性を調べるのはどれか。2つ選べ。
1.輻湊検査
2.眼球牽引試験
3.プリズム順応検査
4Hess赤緑試験
5Titmus stereo test
75 54歳の男性。起床時からの回旋複視を主訴に来院した。視力は正常で、眼底に異常を認めない。Maddox double rod testで左右眼の見え方が水平でかつ平行となった小杆の方向を示す。考えられる斜視はどれか。
1.右眼内方回旋
2.右眼外方回旋
3.左眼内方回旋
4.左眼外方回旋
5.両眼内方回旋